北海道物産の浸透から (上海北海道物産展)
2008.06.13去年2月、北海道開発局の方とお会いしたとき、北海道と中国で何とかつながりを持ちたいが、何かできないか?北海道の雪水は上海で売れないか?と聞かれました。“雪水”とても心を打たれる響きでした。こちらとしても商品化できればぜひ売りたいと答えました。
1990年深秋、主人と一緒に札幌に来てまもなく季節は冬へと移り変わり、暖かい上海からは考えられない北国の寒さに対抗するため、何枚も着込みまるでダルマのようでした。最近、秋冬の札幌駅前通りを歩いているとスキーウェアで着膨れした香港や台湾からの観光客を見てその姿が昔の自分と重なり、「ふっ」とつい笑いが漏れ、あんな格好で暑くはないのかと思ってしまいました。これが一般的な北海道に対するイメージで、そのイメージを形成したのは1970年代に放送された日本映画『黄色いハンカチ』からでした。北海道といえば、たくさん雪が降り、寒いというのが9割以上もの中国人の答えです。このイメージは揺るがし難いものです。
私はこのイメージが北海道にとって有利なものだと思っています。雪の降らない南の人間にとって、雪とはとてもロマンチックなもの。お金では北国の「白銀の世界」は決して求められるものではないからです。このイメージを生かし、北海道の冬、北海道の雪を北海道観光の切り口として雪の降らない南国に売り込めばきっと成功するでしょう。
人間にはないものを求めたがる欲望があります。北海道に来る外国人観光客の大半を香港と台湾の観光客が占めています。ススキノや大通公園で彼らに出くわす、なんてことはざらにあることで、冬のスキー場にはスタッフたちの中国語のレッスンの声が響き渡っています。彼らは北海道にあこがれ、南国にはない、決して作り出すことのできない北海道の雪、北海道のスキー、北国の雪景色を求めて来ているのです。
私も香港、台湾の方たちと同じように、雪の降らない上海から来ました。18年間北海道で新鮮な空気を吸い、おいしい水を飲み、クリーンな環境で暮らしてきました。「道産子」として北海道の良さはよく知っています。そして、北海道の良さが何か知っているからこそ北海道を一番よく売り込めると考え、北海道を上海で売り込もうと呼びかけています。
世界の経済を牽引する中国は毎年10%も伸び続けています。中国経済の中心、上海では2007年のGDPが12,001.16億元となり、’06年に比べ13.3%の伸び率を記録、16年間連続二桁の成長率を見せました。’07年の上海市の統計数字では、地方税収が33.5%の増加で1,975.48億元となっています。その内訳は下記数字のとおりです。
・増値税(生産型企業): 313.42億元(前年比 16.0%)
・営業税(小売、サービス業): 714.6億元(前年比 27.9%)
・個人所得税: 169.44億元(前年 29.3%)
・企業所得税: 425.63億元( 前年 57.3%)
上記のデータで分かるように、企業、個人、政府共に豊かになってきました。中国の経済発展に牽引され、国民の生活が裕福になりつつあります。今、全世界の企業、全世界の観光業界が中国、そして上海市場を狙っています。市内には輸入食品があふれ、外国の観光コマーシャルがテレビの各チャンネルで流れています。一般の中国人が海外旅行をする時代もまもなくやって来ます。
上海は都会化が進み、1,300万人が在住し、約600万人以上の上海市に戸籍をもたない外来者も住んでいます。毎日高層ビルと人の波にのまれ、時間に追われて、ゆとりのない生活を送っています。彼らには、リラックスのできる旅行が必要です。
北海道のような白銀世界は上海にはありません。週3便の札幌−上海直行便はたった3時間半で両国をつなぐ。事業を成功させる三つの要素“天時・地利・人和”のうち、二つの要素−“天時・地利”がもうすでに満たされています。最後のひとつ、人の努力−“人和”は足りていますか?
北海道物産の上海市場参入への取り組みは、2005年から道経済部が主体となって実行委員会形式で開始されました。販売・展示試食などを通じ道産品のPRを行い、北海道のイメージアップ及び道産品ブランドの確立を目的とし、連続4年、上海の第一ヤオハンデパートと上海久光デパートで計5回の北海道物産展が開催されました。会場には豊富な品ぞろえと観光お土産、観光パンフレットをそろえ、多くのお客様のご来場により、消費者と密着した交流を実現しました。
この4年間、北海道物産展の売り上げは増える一方です。
@第一ヤオハンデパート(2005.01.15〜23/9日間):展示45品、販売16品:売上55,610元(約89万円)
A第一ヤオハンデパート(2006.01.14〜22/9日間):販売63品:売上153,902元(約230万円)
B第一ヤオハンデパート(2007.01.25〜31/7日間):販売114品:売上172,996元(約278万円)
C上海久光デパート(2007.09.26〜10.16/21日間):販売141品:売上381,551元(約610万円)
D第一ヤオハンデパート(2008.01.18〜30/13日間):販売123品:売上235,568元(約377万円)
※ 日本円は、その時点のレートで換算した概算額
5回のイベントを経て、北海道の食品がとても好評を受けていることが数字から見て取れます。しかし、数字では表せない、売れた商品より大きな収穫があります。それは北海道のイメージを上海で売り込めたということです。
「北海道物産展」の会場に道経済部と水産林務部、北海道貿易物産振興会の職員が立ち、ジェスチャーや片言の中国語での道産子と上海市民のふれあい交流ができ、“試される大地北海道”と印字された赤いはっぴが会場を染め、縦1m以上の観光ポスターが会場を飾り、“北国の春”など北海道を代表する歌が会場に流れました。来場されたお客様は、視覚、聴覚、味覚とも北海道を身に感じ、北海道の情報を受けました。「北海道の食べ物は美味しいですね」「北海道に行きたい」などの声が聞かれました。北海道の観光パンフレットや葉書を求めるお客様も多く、まさに、形のない北海道のイメージが、形のある美味しい北海道の食べ物と結びついて、上海のお客様に実感を持たせました。これこそが「北海道物産展」。一石二鳥の効果です。
北海道の物産が上海市場に浸透し、物産を売るだけでなく、北海道のイメージを確立させ、北海道により多くの観光客を招くことがより大きな目標ではありませんか?
北海道は道民皆様の北海道です。中国のことわざに“大河有水小河満”とあります、これは河と支流の関係を描写しています。北海道の経済状況と道民の生活は大河と小河の関係で、北海道経済が悪くなれば、道民の生活が乾き小河のように苦しい、逆に北海道の財政が大河の水のように流れると、道民の財布もあふれる。
観光業は経済効果が大きい産業のひとつです。北海道の観光が一番北海道の経済を牽引する産業だと思います。水場はお金さえあれば作れますが、雪景色はお金で作れません。北海道の雪は毎年神様から頂く自然の恵み。この神様の恵みを無駄にしないよう、そして、神様の恵みを南国の上海のお客様と分かち合いましょう!
テレビコマーシャルの効果が大きいのは承知の上ですが、自分の努力範囲で、身近な宣伝も効果的だと思います。北海道物産展の上海開催は良い例といえるでしょう。
“天時・地利・人和”の三要素中一番重要な“人和”−認知の一致、そして協力し合い北海道を盛り上げていく努力はまだまだ足りないのです。北海道の経済は暗い谷底に落ちていますが、暗いときは明るい夢を見る、暗いときは種をまき、明日につなげる。上海の「北海道物産展」は一例にしか過ぎない。「北海道物産展」だけで、北海道のイメージを確立し、北海道のメーカーを救い、観光業を盛り上げるなど、かなわぬ夢ですが、私たち一人ひとりが『北海道大好き』を口にするだけでなく、行動に移し、行政も、個人も、微力ながらも力を出し合い、素晴らしい北海道をより多くの人々に知ってもらう、北海道の大自然をより多くの観光客に満喫してもらうことこそが、本当の『北海道大好き』な道産子ではないでしょうか。
北海道の何を売る?どこで売る?誰に売る?
皆様と共に考え、共に行動できたら幸いと思います。
(開発こうほう08年7月号「視点論点」から転載)
profile
呉 奇(ご き)氏
1957年中国上海市生まれ。’90年来日、’92年から北大研究生。’94年日中物産株式会社を設立、2002年上海市で北海道産水産品の輸入・販売を行う「石狩水産品(上海)有限会社」を設立。2006年6月より旭川観光大使。
Back Number list
- 2008.06.13 北海道物産の浸透から (上海北海道物産展)
- 2008.03.05 道産品嗜好調査結果(上海)
- 2008.03.05 シンガポール
- 2008.03.05 台湾
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポート@ (中国の概要)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートA (中国の市場としての捉え方)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートB (今後の展望)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートC (上海市の概要)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートD (上海の歴史)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートE (上海周辺都市の状況)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートF (上海人にとっての「ブランド」)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートG (市場としての「上海」の考え方)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートH (中国のカントリーリスク)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートI (上海の日本食品市場)
- 2008.02.06 中国及び上海に関するレポートJ (北海道産品の売り込み)







